「りょーかい」? それとも「りょうかい」?
| 対象アプリケーション |
| Microsoft IME 2003 |
もし、「『了解』、『普通』、『平気』のふりがなはどうふりますか?」と聞かれたら、皆さんならどう答えますか? 簡単ですね。「りょうかい」、「ふつう」、「へいき」です。
ここで少し考えてみてください。「了解」、「普通」、および「平気」は、普通、[リョーカイ]、[フツー]、および [ヘーキ] と発音されますが、[ー] の伸ばす音の部分が発音とは違う「う」や「い」で書き表されています。これはなぜなのでしょうか。
「現代かなづかい」でそう決まったから、というのが簡単な答えなのですが、そこに至るまでに、50 年近くもの間、多くの人が議論してきました。そして、どうひらがなで書くかを比べてみると、文字を使う言葉に共通した側面が見えてきます。
今回は、この伸ばす音、特に、以下について取り上げてみたいと思います。
伸ばす音の書き方の歴史
「ー」の使い方と言葉と文字との関係
Microsoft IME での取り組み
「りょーかい」? それとも「りょうかい」?
時は明治 30 年代 (1900 年代初頭)、「日本語を書くときは漢字を使うべきではない」、「ローマ字を使うべきだ」などの意見が出るなど、どう日本語を書くかという問題が活発に議論されていた時代でした。当時は、いわゆる旧仮名遣いを使っていて、同じ [コー] という発音でも、「かう (校)」、「かふ (甲)」、「こう (公)」、「こふ (劫)」、「くわう (光)」など、漢字によってふりがなが異なり、しかも実際の発音とは大きな差がありました。ほとんどの子供が小学校を卒業すると社会に出るという時代だということもあり、小学生でも簡単に学べる書き方の確立が必要でした。
そこで、政府が明治 33 年 (1900 年) に制定したのが「小学校例施行規則」です。この中で、発音にとても近い書き方が採用され、音読みの伸ばす音は「ー」と書く、とされました。つまり、「りょーかい」、「ふつー」、「へーき」などの書き方です。そして、政府は訓読みにも「ー」を適用する修正案を準備していました。
この書き方は、教育界からは支持されたものの、多くの反対にあいました。たとえば、森鴎外は、人やその時代によって発音や書き方にゆれがある言葉を、一度にすべて 1 つの文字にあててしまうのではなく、もっと学者の間で議論してから決めるべきだ、と主張しました。結局、明治 40 年 (1907 年) に貴族院で反対案が可決され、さらに翌年内閣が交代すると完全にこの書き方は廃止されました。これによって旧仮名遣いが復活することになります。
現在の書き方になるのは昭和 21 年 (1946 年) の「現代かなづかい」からです。これによって、基本的に発音に近い書き方になりますが、いわゆる「てにをは」の「へ」、「は」、および「を」に旧仮名遣いを残したり、「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の区別を一部残したり、伸ばす音は「あ」、「い」、「う」、「え」、または「お」を使用したりするなど、おなじみの書き方となります。
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「ー」の使い方と言葉と文字との関係
では、「ー」はどのようなときに使うとされているのでしょうか。
「外来語の表記」(平成 3 年 (1991 年)) によると、「ー」は、いわゆるカタカナ語 (専門用語で外来語といいます) で使う、とされています。たとえば、[シュート] と発音する語は、「ゴールにシュートする」であれば、「シュート」となり、「州都」、「舅」、「宗徒」などであれば「しゅうと」となります。つまり、「ー」はカタカナ語でしか使われませんから、逆にいえば、「ー」は外来語かそうでないかを区別するという役割を担っている文字とも言えます。
ここで、少し考えてみてください。もし「ー」がすべての単語で採用されていたとしたら…。「シュート」、「州都」、「舅」、「宗徒」すべてが「しゅーと」となって、発音には近いですが、ひらがなからは「シュート」、「州都」、「舅」、および「宗徒」の区別が全くできなくなってしまっていたでしょう。逆に、すべて旧仮名遣いのままだったとしたら…。「シュート」はどうなっていたかわかりませんが、「しうと (州都)」、「しうと (舅)」、「しゆうと (宗徒)」、となって、発音からは遠ざかりますが、ひらがなで書いても「州都」や「舅」のグループと「宗徒」の区別ができます。
このように、かなでどう書くかという話しの中には、どれだけ元の語を区別できるようにするかという面と、どれだけ発音に近づけるかという面の 2 つの側面があります。そして、その根本には、どちらか一方に近づけばもう一方からは遠ざかる、という文字を使う言葉一般に言える問題があるのです。
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Microsoft IME での取り組み
さて、Microsoft IME では、「現代かなづかい」の改訂版である「現代仮名遣い」 (昭和61 年(1986 年)) に準拠していますので、初期設定では、「りょうかい」で「了解」が変換できるようになっています。
さらに、設定を変えることによって、「りょーかい」からも「了解」に変換することができるようになりますので、その方法をご紹介します。
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IME ツール バー の
(ツール) をクリックし、[プロパティ] をクリックします。

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Microsoft IME のプロパティ シートが開くので、[オートコレクト] タブをクリックします。すると、下のような設定画面が出てきます。

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[入力オートコレクト] ボックスの一覧の [「ー」を母音に変換] をクリックします。

- [OK] をクリックします。
これで設定は終わりです。「りょーかい」で変換してみてください。「了解」になりましたか?
この設定をすることによって、伸ばす音の部分に「ー」が入っている場合でも変換できるようになります。もし「りょーかい」、「へーき」のように書いて「了解」、「平気」と変換することが多い場合は、この設定をしてみてください。
さらに、皆様からいただいた誤変換報告の中身を分析したところ、もともと伸ばす部分ではないところに「ー」が入っている場合、たとえば、「長ーい」や「早ーい」などを入力しようとして誤変換になってしまっている例が多くありました。そのような場合でも期待通りの変換ができるように、次の 2007 Microsoft Office system に入る Microsoft Office IME 2007 では、「ながーい」や「はやーい」からも、「長ーい」や「早ーい」に一回で変換できるようになっています。
このように、正しい書き方でもくだけた書き方でも正しく変換できるように、私たちは日々開発を続けていきます。ぜひこれからも Microsoft IME にご期待ください。
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参考文献
- 『假名遣意見』(1999) 森鴎外、青空文庫 (底本「筑摩全集類聚 森鴎外全集 第 7 巻」(1971)第 1 版、筑摩書房)。
- 『国語施策百年史』(2006)、文化庁、出版社 ぎょうせい。
- 『何でもわかることばの知識百科』(2000)、三省堂編修所、三省堂。